ただ偶然に出会い耳にしただけにも関わらず、魂を揺さぶられ、人を釘付けにする音楽に出会うことがある。老若男女、どの世代の価値観に縛られることもなく、そのインパクトたるや脳裏に鮮明に焼きつき何年経っても忘れられないほどである。ひとたび耳にすると、慈愛と郷愁に溢れ、どこか懐かしく切ない気持ちになり、時間を忘れるほどに聴き入ってしまうのだ。そういった曲は魂の歌、ソウルミュージックと称される。
音楽的なジャンルで言えばリズムアンドブルース、つまりはR&Bである。中核となる音楽性に楽器やビジュアルといった要素を一切必要とせず、歌唱力のみで歌い上げるのが特徴的だ。決まった旋律はあるものの、ライブでは即興演奏などでシンガー自身のアレンジが入り、録音された既製品には無い、より魂のこめられたドラマチックな歌を聴かせる。R&Bは元々アメリカの奴隷階級制下に置かれたブラックアメリカンたちの音楽だ。
歌にこめられたソウルフルな力強さ、アフリカーナとしての魂の起源である広大な大地を彷彿とさせる。R&Bは現代の音楽シーンのほぼ全てに影響を与えていると言っても過言ではない。日本の歌手にも、世界的に有名なR&Bシンガーをリスペクトしている者は多い。たった1曲を全身全霊で歌い上げるその圧倒的な歌唱力ももちろんのことながら、技術や視覚的センスよりも、その音楽的背景と思想、歌い手そのものの人生をも反映する荒削りな音楽が人々を惹きつけて止まないのだろう。